カジノ事業からの反社会的勢力排除(11)

  • 2015/10/13
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株式会社エス・ピー・ネットワーク 取締役 主席研究員 芳賀 恒人(会社および著者の紹介は巻末を参照)

前回まで数回にわたって、具体的な反社チェックの手法や留意点について解説してきました。今回と次回で本コラムを締めくくりたいと思いますが、あら ためて、カジノ事業からの反社会的勢力排除について、その考え方を整理し、今後のあり方について具体的な提言をしてみたいと思います。

まず、大きな問題提起として、そもそも、「反社会的勢力」の捉え方自体に、以下の3種類があることを指摘しました。

① 一般的に理解・認識されている「反社会的勢力」(属性要件等ベースの反社会的勢力)
政府指針(犯罪対策閣僚会議申し合わせ「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」平成19年7月)におけ る「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人」に加えて、その後の社会情勢の変化(暴排条例の全国の自治体での制定、反社会 的勢力の更なる不透明化・潜在化の進展、準暴力団などグレーゾーンの拡大など)をふまえて、「共生者」や「元暴力団員」なども含めるとする、(行為要件に も配慮しつつ)主に属性要件に着目した捉え方です。
② 最新の実態をふまえた本質論から導かれる「反社会的勢力」(実態ベースの反社会的勢力)
反社会的勢力を明確に定義することは困難であるとの前提に立ちながら、暴力団や「現時点で認識されている反社会的勢力 (便宜的に枠を嵌められた、限定された存在としての反社会的勢力)」だけを排除するのではなく、「暴力団的なもの」「本質的にグレーな存在として不透明な 反社会的勢力」を「関係を持つべきでない」とする企業姿勢のもとに排除していことする考え方がベースとなります。
このような捉え方が本来のあり方であって、当社では、反社会的勢力を「暴力団等と何らかの関係が疑われ、最終的には『関係を持つべきでない相手』として、事業者が個別に見極め、排除していくべきもの」と定義しています。
③ 実務的に捕捉可能な「反社会的勢力」(結果ベースの反社会的勢力)
理論的には、①または②と捉えるべきと言えますが、反社会的勢力がその不透明化・巧妙化を進めている以上、民間事業者が100%認知することは不可能であり、その捕捉には限界があります(警察でさえも全てを把握できているわけではありません)。
その結果、反社チェックの範囲・手法・深度等によって、事業者が捕捉できる「反社会的勢力」は異なり、事業者の立場からすれば、「実務的にどこまでチェッ クすべき」かのスタンス次第で「反社会的勢力」の範囲が異なることをふまえた、(理論に対して結論から見た)現実的な捉え方となります。

なお、①の「属性要件等ベースの反社会的勢力」の捉え方が、静的・限定的であればあるほど、警察情報や当社が提供しているような(民間の)反社会的勢力 データベースを活用して捕捉できる可能性は高まると言え(もちろん、100%の捕捉は不可能ですが)、この「実際に捕捉可能な結果ベースの反社会的勢力」 とほぼ同じ捉え方に近付いていくとも言えます。

一方で、カジノ事業に関わる主体によって、それぞれに求められる「反社会的勢力排除」のあり方が異なる点についても、十分な検討が必要となることも指摘いたしました。

① 「関与する個人・法人」たる免許申請者
免許申請者自身に求められる厳格な「清廉潔癖性と遵法性」を担保するためには、暴力団と直接・間接に関係を持つと考え られる反社会的勢力を排除すべき(関係を持たない、その影響力を排除する、その活動を助長しない等)との立場から、前述の②の「実態ベースの本来的な反社 会的勢力」とまで関係がないことを、継続的に証明する努力が求められると言えます。
とりわけ、「活動を助長しない」「影響力を排除する」との観点からは、自らが関与する取引等の「商流」からの反社会的勢力排除にまで注意を払うことまで求められていると言えます。
② 免許申請者を中核とした関連する事業者(施設の施工業者や管理業者など)
免許申請者の「商流」に位置づけられる関連事業者については、免許申請者自身と同じ厳格な健全性が、本来求められるべきであるとはいえ、実務的には、最低限、前述の①の「属性要件等ベースの反社会的勢力」に関連する事業者が該当していないことが求められると言えます。
ただし、免許申請者との関係において、人的・経済的・資本的な「影響力」や「関係の親密さ・密接さ」等の度合いが大きい先については、より厳格な②の「実態ベースの本来的な反社会的勢力」に該当しないことまで要請されることもあると言えます。
また、当該事業者のみならず、その業務について関連付けられる委託先や再委託先についても、確認しておくべき範囲に含めるべきと言えます。
③ 入場者(プレイヤー)
日本における本人確認制度の現時点の脆弱性や手続きの迅速性等を考慮すれば、「入場者」からの反社会的勢力排除におい ては、個々人のカジノゲームによる儲けが限定的かつ捕捉可能であり、万が一の際には退場の権限も保持できていることを前提として、本人確認制度とデータ ベースによって捕捉可能なものについて確実に排除していくこと(すなわち、③の結果ベースの捕捉可能な反社会的勢力の排除)が最低限必要となると思われま す。
もちろん、チェックの精度、捕捉可能性を高める努力を継続的に行い、②の実態ベースの本来的な反社会的勢力を排除していくことが、社会の要請(社会の目線)に応えるためには必要となることは言うまでもありません。

これまでの議論を整理すれば、実務上、このような一応の類型化は可能となりますが、明確にしておきたいことは、カジノ事業者に求められているのは、暴力団 対策法によって存在が認められた暴力団や当局が認定した暴力団員等、あるいは、「現時点で認識されている反社会的勢力」「実務的に捕捉可能な反社会的勢 力」のみの排除にとどまるのではなく、「真の受益者」としてそこに直接つながる「暴力団的なもの」「本質的にグレーな存在である反社会的勢力」の排除であ るはずだということです。

カジノ事業の健全性については、社会の目線が、そもそも最初から高いレベルのものを求めていることが明らかである以上、その収益がどのような形であっても、そして、どのような反社会的勢力に対しても、還流してはならないのです。

一方で、既にご説明している通り、反社会的勢力の不透明化・巧妙化やデータベースの限界などの要因によって、その全てを捕捉することは不可能です。
したがって、結果的に「実務的に捕捉可能な反社会的勢力」レベルでの排除となるにしても、それは、最低限、「一般的に理解・認識されている属性要件等に着 目した反社会的勢力」を排除しようとする取組みの結果であり、事業者としては、可能な限り「実態ベースの本来的な反社会的勢力」の排除に向けて取り組んで いる結果であると示すことが、厳しい社会の目線に対して説明責任を果たしていくためには必要なことです。

カジノ事業からの反社会的勢力排除のあり方を考える上では、社会の目線を意識した、このような考え方が出発点であり、目指すべき到達点であるとも言えるのです。


■ 会社紹介

株式会社エス・ピー・ネットワーク

警視庁・道府県警の出身者をはじめ、企業危機管理に伴う法務・労務・財務・広報やサイバーセキュリティの専門家で構成されるクライシス・リスクマネジメント専門企業。
反社会的勢力への実務対応から企業不祥事等に伴う緊急対策支援に至る「直面する危機(クライシス)」対策に数多くの実績を有し、実践から導かれた理論に基づき「潜在する危機(リスク)」の発現を未然防止するためのコンサルティングと人的支援を展開する。
従来の枠に留まらない、危機管理的視点からの実践的なコンプライアンス態勢及び内部牽制態勢の構築を多くの企業で手がける。時代の流れを先取りした企業危機管理論には、上場企業や株式公開を目指す企業の他、証券会社や監査法人からの支持も厚い。

株式会社エス・ピー・ネットワークのHP
株式会社エス・ピー・ネットワークHP 暴排トピックス(毎月更新)

■ 著者

芳賀 恒人 Tsunehito Haga
東京大学経済学部卒業。大手損害保険会社を経て、エス・ピー・ネットワーク入社。現在、取締役 主席研究員。

企業のリスク抽出・リスク分析ならびにビジネスコンプライアンスを中心とする内部統制システム構築を専門分野とするリスクアナリストとして、数多くの企業危機管理に関する事例を手がけるほか、大学での講義など幅広く活躍。
とりわけ、企業の反社会的勢力排除の内部統制システムの構築・運用支援、排除計画の策定・排除実務支援、犯罪対策閣僚会議下の「暴力団取締り等総合対策 ワーキングチーム」での報告、反社会的勢力排除に向けた企業の取組みに関する各種コラムの執筆・講演、eラーニング教材の監修など、反社会的勢力排除の分 野を中心に数多くの実績を有する。

▼ 主な著作
「暴力団排除条例ガイドブック」(共著)
「ミドルクライシス~内部統制を活用した企業危機管理vol.1.反社会的勢力からの隔絶」
「反社会的勢力排除の『超』実践ガイドブック」
「金融機関営業店のためのVS反社マニュアル」

 

カジノIRジャパン

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