カジノ事業からの反社会的勢力排除(12)制度設計への提案 - 最終回

  • 2015/10/31
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株式会社エス・ピー・ネットワーク 取締役 主席研究員 芳賀 恒人(会社および著者の紹介は巻末を参照)

前回は、カジノ事業からの反社会的勢力排除の考え方について整理しましたが、最後に、本コラムを締めくくるにあたり、実際の制度設計に関する筆者なりの提言をしてみたいと思います。

① IR運営事業者の免許申請と審査(IR)

IR運営会社に求められる厳格な「清廉潔癖性と遵法性」を担保するためには、反社会的勢力排除の観点からの健全性に関する審査を、申請時はもちろん、定期的(例えば1年ごと)に実施し、最新性を保持していくことが重要です。

そして、審査は、専門的かつ公正中立の立場でなされるべきであることから、IR運営事業者が第三者である外部専門家によるデューデリジェンスを受け たうえで申請する、あるいは(加えて)、外部専門家から構成される特定の第三者委員会(内閣府外局の設置されるカジノ管理委員会)が集中して審査を行うと いった方法が望ましいものと考えられます。

また、その審査の範囲については、証券取引所の上場基準等に準じて、役員や従業員、株主、取引先といった関係者をチェックすることはもちろんのこ と、当該企業が「暴力団員等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有する」かどうか、「暴力団員等に対して資金等を提供し、または便宜を供与す るなどの関与をしていると認められる関係を有する」かどうか、といった属性要件や行為要件だけにとらわれない、「共生者をはじめとする怪しい周辺者の排 除」や「商流からの排除」の観点にまで注意を払う必要があります。
その他、具体的なチェックの対象範囲や手法等については、既に本コラム(第6回~第10回)でご説明してきた通りです。

なお、反社チェックにおいて、警察情報やデータベースの限界に起因する「グレー」認定先に対する監視体制についても、審査上は厳格に確認していくべきと考えます。
具体的には、「グレー」判断の妥当性、「継続監視」とすることの妥当性、「継続監視」を適切に実施している(監視をしないなど不作為がないこと)ことが十分証明できるか、といった視点が審査においては求められることになります。

② IR関連事業者の免許申請と審査

機器メーカーやカジノマネジメント会社などカジノ部分に”深く”関与する事業者についても、免許対象とし、十分な健全性を確保する審査が必要であることは既にお話した通りです。

厳格な審査方法としては、IR運営事業者と同じく、第三者である外部専門家によるデューデリジェンスを受けたうえで申請する、あるいは(加えて)、 外部専門家から構成される特定の第三者委員会(内閣府外局の設置されるカジノ管理委員会)が集中して審査を行うといった方法が望ましいものと考えられま す。

ただし、IR関連事業者は事業者の数が膨大になることから、すべての事業者を画一的に深く審査するのあまり現実的な方法ではありません。したがっ て、機器メーカーやカジノマネジメント会社など特定事業者以外は、少なくとも、所定の審査項目に基づく外部専門家のチェック結果の提出および反社会的勢力 と関係がないことの誓約書の提出といった対応なども考えられるところです。

また、業務委託先や再委託先についても、元請けとして厳格に管理していることを疎明する資料(委託先等との暴排条項入りの契約書の写しや委託先等か ら提出された誓約書、元請けとして実施したチェックの結果など、取引先等の管理態勢の状況等)の提出についても求めることが望ましいと言えます。

③ 入場者審査

入場者の審査としては、事前に、あるいは入場手続きの一環として会員登録のプロセスを設け、本人確認を厳格に実施のうえ、その属性について、データベースを活用したスクリーニングを実施することが現実的な望ましい方法と言えます。
ただし、警察データベースとの連携が、特に現役の構成員を排除するために有効であることは間違いありませんが、現段階で実現可能性については懸念がありま すので、暴追センターの提供するデータの活用や当社のような民間事業者が提供するデータベースを活用することが、民間としてできる最大限の努力として、現 実的な方法となることが予想されます。

また、本人確認手続きにおいては、グローバル・スタンダードに準じて、顔写真付きの身分証明書(運転免許証や今後利用されるマイナンバー制度における個人 番号カード、パスポートなど)のみ有効として、それ以外のお客さまは会員登録を認めない(入場を認めない)とすることが大きなポイントとなると思われま す。

なお、データベース・スクリーニングにおいては、同姓同名レベルでの一致および年齢の一致(±1歳レベル)までの段階で、時間的な制約等から入場の 可否を判断せざるを得ないことから、ある一定の基準のもと、「グレー」として入場を認めつつ、厳格なフラグ管理のもと、その行為(利用金額や不正行為の有 無など)をフロア内でモニタリングし、問題があればその時点で排除するといった管理手法などが考えられます。

また、いったん会員登録をして入場を許可した者であっても、例えば、顔写真とスクリーニング結果から警察と連携して暴力団関係者であることが判明した場合には、その時点で強制的に排除(退場)させる、次回以降の入場を認めないといった措置も十分考えられるところです。
さらには、ゴルフ場詐欺や口座開設詐欺同様、詐欺罪によって事後的に告訴するといった極めて厳格な対応も視野に入れることができます。

その他の手続きとしては、上記対応の根拠となる反社会的勢力でないことの表明確約書への署名や施設利用約款への暴排条項の盛り込み、会員専用カード等による資金の流れの把握(現金やクレジットカードの利用を制限する)といったことも考えられます。

なお、入場者の審査については、反社会的勢力排除の観点だけでなく、アンチ・マネー・ローンダリングやギャンブル依存症対策の観点も加味した形で「一体的に制度設計する」ことが効率的かつ重要となります。

例えば、(一部のVIP等一定の要件を満たす者を除き)会員専用カードへの入金としてフロア内での利用を制限することで、資金の流れを把握してマ ネー・ローンダリングに悪用されるリスクを低減させるだけでなく、利用上限額を事前に設定することで、上限に達した場合の強制退場や、入場回数や滞在時間 の管理によって利用や入場を制限するといった「依存症対策」としての応用が期待できるものとなります。

会員登録時にデータベース・スクリーニングを実施することが望ましいことについては、アンチ・マネー・ローンダリングや依存症対策の観点からも言えます。

前者については、米国財務省(OFAC)や英国財務省、米国FBIなど世界各国・機関から出されている制裁リストやPEPs(外国における重要な公的地位を有する者)リスト等をデータベース化したシステムが現実に外国のカジノ事業において利用されています。

また、後者のギャンブル依存症対策で言えば、例えば、「排除プログラム」と呼ばれる、ギャンブル依存症を患っている、もしくはそのリスクが高いと判 断される個人に対して、カジノ施設への入場を禁じるプログラムをベースとした利用許可システムが海外では実際に運用され、一定の効果をあげているとのこと です
事実、シンガポールでは、本人申請による「自己排除」、家族の申請による「家族排除」、生活保護受給者や自己破産者など行政によって定められた一定の基準に基づいてすべての国民に対して適用される「第三者排除」の3つの方式で構成されています。

まとめ

以上、カジノ事業に関わる各主体に対する健全性の観点からの審査および制度設計について、そのあり方についての筆者なりの提言を述べさせていただきました。

日本におけるカジノを含む統合リゾート(IR)事業の法的環境がいまだ整備されていないとはいえ、海外からの集客効果、直接・間接の経済効果などからみて、IR事業は確かに魅力的なコンテンツではあります。
そうであるが故に、その利権に群がる構図は、どの時代も、どの国においても同じであり、事業の健全性の担保が大きな課題となっています。

その中でも、とりわけ、「カジノ事業からの反社会的勢力排除」というテーマは、日本独特の課題だと言えるでしょう(海外のマフィアがその属性だけで カジノから排除されることはないと聞きますが、日本の暴力団はその属性だけで、日常生活においても様々な制約を受けていることはご存知の通りです)。

そして、このテーマに明確かつ絶対的な解決法があるわけではなく、100%排除することは困難であるとの前提に立たねばならない点も、その特殊性や困難さを表しています。

しかしながら、関連する事業者には、この困難な課題に対して、「一種のあきらめをもって対応する」といった受動的なスタンスではなく、社会の目線を 強烈に意識しながら、常にそれを排除しようとする真摯な姿勢を示すこと、示し続けるという能動的なスタンスが求められているということは間違いありませ ん。


■ 会社紹介

株式会社エス・ピー・ネットワーク

警視庁・道府県警の出身者をはじめ、企業危機管理に伴う法務・労務・財務・広報やサイバーセキュリティの専門家で構成されるクライシス・リスクマネジメント専門企業。
反社会的勢力への実務対応から企業不祥事等に伴う緊急対策支援に至る「直面する危機(クライシス)」対策に数多くの実績を有し、実践から導かれた理論に基づき「潜在する危機(リスク)」の発現を未然防止するためのコンサルティングと人的支援を展開する。
従来の枠に留まらない、危機管理的視点からの実践的なコンプライアンス態勢及び内部牽制態勢の構築を多くの企業で手がける。時代の流れを先取りした企業危機管理論には、上場企業や株式公開を目指す企業の他、証券会社や監査法人からの支持も厚い。

株式会社エス・ピー・ネットワークのHP
株式会社エス・ピー・ネットワークHP 暴排トピックス(毎月更新)

■ 著者

芳賀 恒人 Tsunehito Haga
東京大学経済学部卒業。大手損害保険会社を経て、エス・ピー・ネットワーク入社。現在、取締役 主席研究員。

企業のリスク抽出・リスク分析ならびにビジネスコンプライアンスを中心とする内部統制システム構築を専門分野とするリスクアナリストとして、数多くの企業危機管理に関する事例を手がけるほか、大学での講義など幅広く活躍。
とりわけ、企業の反社会的勢力排除の内部統制システムの構築・運用支援、排除計画の策定・排除実務支援、犯罪対策閣僚会議下の「暴力団取締り等総合対策 ワーキングチーム」での報告、反社会的勢力排除に向けた企業の取組みに関する各種コラムの執筆・講演、eラーニング教材の監修など、反社会的勢力排除の分 野を中心に数多くの実績を有する。

▼ 主な著作
「暴力団排除条例ガイドブック」(共著)
「ミドルクライシス~内部統制を活用した企業危機管理vol.1.反社会的勢力からの隔絶」
「反社会的勢力排除の『超』実践ガイドブック」


  カジノIRジャパン

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