IR事業コンソーシアム参画のすすめ(4)「IR(都市開発)事業者」と「カジノ施行者」の分離論

  • 2015/7/27
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第4回 「IR(都市開発)事業者」と「カジノ施行者」の分離論の考察

本連載の第1回から3回まで、IR事業コンソーシアムは、単一企業体として、特定複合観光施設区域に設置される全ての施設の開発、経営を担う前提とした。

一方、日本の産業界の中には、「特定複合観光施設区域の開発、経営の担い手は、必ずしも単一企業である必要はないのではないか?」との問題提起がある。
今回は「IR(都市開発)事業者」と「カジノ施行者」の分離論を考察する。

分離論-「IR推進法案」「IR実施法案の基本的な考え方」からみた実現性

現在のところ、法律、制度設計を担うIR議連、政府の関係者は、特定複合観光施設区域の開発と経営(IR事業)の担い手として、単一企業体(単一の「IR事業コンソーシアム」)を前提としている。

一方、産業界の中には、IR事業の担い手について、「IR(都市開発)事業者」と「カジノ施行者」に分離(分離論)することを望む声がある。

現在公開されているIR議連の「IR推進法案」、「IR実施法案の基本的な考え方」は、IRを担う事業体の在り方を明確に特定していない。IRを担う事業体の在り方は、今後、策定・公開されるIR実施法などにおいて明確化されることになる。

少なくとも、「IR推進法案」、「IR実施法案の基本的な考え方」においては、「IR(都市開発)事業者」と「カジノ施行者」の両方が、自治体の選定プロセスで認められ、国(カジノ管理員会)の背面調査・許可を得る前提であれば、分離論は否定されてはいないと考えられる。

ちなみに、渡邉雅之氏(弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士)の論文「IR資料室-法制度 IRにおけるゲーミングライセンス制度 第8回『海外カジノ事業者への運営委託に関して』」には、分離論と関連性があり、示唆に富む議論が展開された。以下はその抜粋。

IR資料室-法制度 IRにおけるゲーミングライセンス制度 第8回 『海外カジノ事業者への運営委託に関して』
< 抜粋 >
”IR推進法案はプログラム法案であるため、具体的な制度設計についてはある程度柔軟性が認められるものと考えられます。したがって、かかるスキーム(カジノ部分の海外カジノ事業者への運営委託)が認められるか否かは、IR実施法案においてどのように規定されるかによると考えられます。
IR実施法案において、①IR区域認定地方公共団体が、IR事業者に関してその運営委託先も含めて選定審査をすることとし、②カジノ管理委員会による許可(免許)審査手続において、カジノ事業の運営委託先についても背面調査・免許審査の対象とすることとすれば、IR推進法案にも反するとまでは言えないと考えられます。
いずれにせよ、IR推進法案が国会で成立した後の制度設計で問題となる大きな論点の一つであることは間違いありません。”

 

分離論のメカニズム-「IR(都市開発)事業者」の3つの権利が前提

◇「IR(都市開発)事業者」と「カジノ施行者」の関係図

カジノ

分離論において、「IR(都市開発)事業者」はカジノ以外の全てのIR施設群の開発と経営を担当する。「カジノ施行者」はカジノ部分のみの開発と経営を担当する。

「IR(都市開発)事業者」は大きく3つの権利を有する。これは、1)IR区域全体の土地の使用権、2)IR区域全体の開発権、構築物の所有権、3)カジノ施行者の任命権、である。

IR(都市開発)事業者はIR全体をデザインし、計画を策定し、開発を実施する。ただし、カジノフロアのみについては、建物躯体(設備なし、スケルトン)を「カジノ施行者」に賃貸し、カジノフロアの開発(設備設置)と経営(投資回収責任と運営責任を負担。人材雇用、組織構築、営業)を委ねる。

IR(都市開発)事業者は「カジノ施行者の任命権」を有しており、「カジノ施行者」を選定する際に、競争入札などを通じて契約条件を交渉する。
契約条件には、レベニューシェア、契約期間、解除条項などが含まれる。変動賃料のテナント契約のイメージである。

むろん、「IR(都市開発)事業者」、「カジノ施行者」とも国(カジノ管理委員会)による背面調査を経て、許可を受ける前提である。

一般に、IRの収益構造は、カジノ部門は面積では5%未満であるが、売上高では80%強(アジア各国共通)となる。ゆえにIR施設全体が集客エンジン、カジノが収益エンジンである。
カジノの収益力がカジノ以外のホテル、劇場、MICE、文化施設など観光、文化発信施設をファンディングするわけだ。

単一事業体(IR事業コンソーシアム)においては、同一エンティティ内に全てが包含されており、カジノ収益はIR全体に循環する。一方、分離論においては、3つの権利と契約により、カジノ収益をIR全体に循環させるわけだ。

分離論を唱える人々のバックグラウンド-高いCSR意識を持つ、日本の上場企業

分離を支持する人々の多くは、日本の大企業である。上場企業として、社会の公器、CSR(企業の社会的責任、Corporate Social Responsibility)の意識が高い企業である。

そうした企業は、IRの目的である観光、文化発信、地域創生に共感を持ち、IRを都市開発事業と捉え、自らが属する地域の発展のために貢献したいと願っている。
しかしながら、レピュテーションリスクを危惧し、IR事業への意欲を水面下にとどめている。

レピュテーションリスクとは、現時点では非合法であるIRへの参画、カジノへの関与の意欲を公表することで、社会の批判の的になるリスクである。

分離論を唱える人々のモチベーション

カジノ

分離論を唱える人々は、自らが分離論における「IR(都市開発)事業者」となる意向がある。

分離論を唱える人々のモチベーションは、
(1)IR事業からカジノの開発、経営を切り離すことによるレピュテーションリスクの回避
(2)IR本来の目的である街づくりや都市開発に関心を持つ日本企業は、多くの場合、カジノ部分に苦手意識を持つ
(3)第3回で考察したように、国や自治体が「カジノの経験」の定義、要件を高く設定するリスクへの対処
(4)国(カジノ管理委員会)の審査の結果、カジノを得意とするパートナー企業が不許可となるリスクへの対処

このうち、2)3)はIRを街づくり、都市開発と捉える日本企業が、外国カジノ事業者に対して、強い交渉力を確保する狙いである。
外国カジノ事業者が大きな交渉力を持ち、日本企業が街づくりや都市開発をコントロールできなくなるリスクを懸念しているわけだ。

4)であるが、単一企業体(コンソーシアム)のケースにおいては、カジノを得意とするパートナー企業(主要株主 5%以上所有)が国(カジノ管理委員会)から不許可とされた場合、コンソーシアムそのものが連帯責任となり、IR開発計画全体が白紙あるいは大幅な見直しを迫られる可能性がある。

一方、分離論のケースでは、「カジノ施行者」またその主要株主(5%以上)が国(カジノ管理委員会)から不許可とされた場合でも、「IR(都市開発)事業者」のステイタス、IR全体計画への影響は限定的と考えることもできる。
もともと、「IR(都市開発)事業者」、「カジノ施行者」は分離しており、「IR(都市開発)事業者」は当該「カジノ施行者」との契約を解除し、新たな「カジノ施行者」を任命することができる。

ただし、分離論のケースでも、「IR(都市開発)事業者」またその主要株主(5%以上)が国(カジノ管理委員会)から不許可とされた場合には、当然、IR開発計画全体が白紙あるいは大幅な見直しを迫られる可能性がある。

大局観:分離論のメリットとデメリット

メリット:
・多様な日本企業のIR事業への参画が促進される
・IRの公共事業性の高さを考慮すれば、CSR(企業の社会的責任)の意識が高い企業の参画が重要
・日本産業界が「カジノの経験」を持たないハンディキャップを軽減し、IR事業全体をリードしやすくなる
・日本独自の新しいIRの実現がしやすくなる
・日本産業界がIRの開発、経営、運営の事業機会に多面的に関わり、ノウハウ経験を獲得できる

デメリット:
・IR(都市開発)事業者がカジノの経営・運営に完全な責任、ガバナンスを行使できない可能性
・世界的に前例が乏しい
・船頭が多くなり、調整が困難となり、平均的なIRになりやすい
・レピュテーションリスク、カジノと向き合う決意を固めた日本企業が報われない
・外国カジノ事業者、それをサポートする各種団体からの反発
・カジノとIRのシームレス、一体的な運営がしにくい
(日本のIRの収益性の高さ、分離においても「IR(都市開発)事業者」と「カジノ施行者」のコミュニケーションは可能であることを考慮すれば、クリティカルではないだろう)

カジノIRジャパン

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