IRにおけるゲーミングライセンス制度 第31回「IR地区選定先行方式と事業者選定先行方式について」

第31回 IR地区選定先行方式とIR事業者選定先行方式について

弁護士 渡邉 雅之 (略歴は巻末を参照)

これまでの連載では、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(「IR推進法案」)および国際観光振興議員連盟(「IR議連」)の「特定複合観光施設区域整備法案(仮称)~IR実施法案~に関する基本的な考え方」(「IR実施法案の基本的な考え方」)に沿って、IRの選定プロセスを考えてきました。

本稿では、IR地区選定先行方式(IR地区選定⇒IR事業者選定⇒カジノ管理委員会への免許申請)とIR事業者選定先行方式(IR事業者選定⇒IR地区選定⇒カジノ管理委員会への免許申請)について検討いたします。

1 IR推進法案上の手続

IR推進法案2条では、以下のとおり、1項でIR事業者によるカジノ管理委員会に対する免許(許可)申請について、2項で地方公共団体による国に対する特定複合観光施設区域(「IR区域」)について規定をしています。

しかしながら、地方公共団体によるIR事業者の選定については全く規定をしておらず、IR地区の選定の後にIR事業者が選定されるのか(IR地区選定先行方式)、それとも、地方公共団体がIR事業者を選定した上で国に対してIR地区の選定の申請をするのか(IR事業者選定先行方式)明らかではありません。

(定義)
第2条 この法律において「特定複合観光施設」とは、カジノ施設(別に法律で定めるところにより第11条のカジノ管理委員会の許可を受けた民間事業者により特定複合観光施設区域において設置され、及び運営されるものに限る。)(中略)民間事業者が設置及び運営をするものをいう。
2 この法律において「特定複合観光施設区域」とは、特定複合観光施設を設置することができる区域として、別に法律で定めるところにより地方公共団体の申請に基づき国の認定を受けた区域をいう。

 

2 IR議連の考えるプロセスの再確認(IR地区選定先行方式)

「IR実施法案の基本的な考え方」では、以下のとおり、IR地区選定先行方式(IR地区選定⇒IR事業者選定⇒カジノ管理委員会への免許申請)の立場をとることを明らかにしています。

○地方公共団体の申請に基づき、国がIRの設置区域・地点を指定する
カジノを含むIRが設置される区域・地点の指定は、地方公共団体による提案・申請をもとに、国がこれを評価・判断し、指定する。この際、国はIR推進について基本方針を策定するなどその方向性を示す必要がある。カジノはこのIRの内部でのみ存在する。○カジノの施行は民設民営を基本とし、区域指定を受けた地方公共団体が民間事業者を選定する
指定を受けた地方公共団体は、IRを自らの費用とリスクによって整備し、運営する民間事業者を公募により選定することを基本とする。

○民間事業者は別途、国から免許を取得する必要がある
民間事業者は、別途、国に対し申請し、廉潔性、適格性等の審査を経て、免許を取得できた場合、初めてカジノ施設の運営ができることとし、民間事業者による運営行為は国による厳格な規制の対象とする。

 

3 IR地区選定先行方式・IR事業者選定先行方式のメリット・デメリット

上記2のとおり、IR議連は、IR地区選定先行方式の立場を採ることとしていますが、IR推進法案自体は、IR事業者選定先行方式(IR事業者選定⇒IR地区選定⇒カジノ管理委員会への免許申請)を否定しているわけではありません。

実際、IR地区となることを希望している地方公共団体は、すでに外資系のカジノ事業者らと接触を持ち始めており、地方公共団体としてIR事業者を選定した上で、それを前提として、国に対してIR地区の申請をすることを要望しているところもあると聞いております。

以下では、IR地区選定先行方式とIR事業者選定先行方式のメリット・デメリットについて検討いたします。

IR地区選定先行方式 IR事業者選定先行方式
[メリット]
◇IR地区の選定にあたって、IRの中身よりも、当該地方公共団体・地区の特性を重視することができる。
◇小さな地方公共団体でもIR地区に選定されれば、様々なIR事業者(カジノ事業者)の申請を受けられる可能性がある。
◇選定されたIR地区において、すべてのカジノ事業者がIR事業者の選定手続に参画することができる機会がある。
[メリット]
◇IR地区の選定にあたって、選定されたIR事業者の意見を入れて、コンセプト、建造物のデザイン、経済効果など具体的な中身のある提案をすることができる。
◇各地方公共団体のプロポーザルの優劣が明確になり、国においても具体的な中身のある提案であり、選考の判断がし易い。
◇IR事業者の選定にあたって地方公共団体によって、早い段階で背面調査・反社チェックをすることができる。
◇IR地区の選定にあたって、特定のIR事業者との癒着という問題が解消される。
[デメリット]
◇IR地区の選定にあたって、抽象的な前提に基づくプロポーザルになり、コンセプトや経済効果等の数値が大雑把なものとなる。その結果、どの地方公共団体のプロポーザルも似たり寄ったりのものになる。
◇各地方公共団体のプロポーザルが似たり寄ったりになる結果、国としても選定にあたっての判断が困難になる。
◇IR地区の選定にあたって、特定のカジノ事業者との癒着という問題が生じ得る。
◇IR地区の具体的な開発のイメージがわきにくい。
[デメリット]
◇マサチューセッツ州やニューヨーク州では、IR地区の選定も含め、カジノ事業者が申請をすることになっているが、IR推進法案では地方公共団体がIR地区の申請主体となるので、この段階でのIR事業者の位置付けが不明確(地方公共団体とIR事業者の共同申請とするのか?)
◇カジノ事業者として、利益相反の観点から、一つの地方公共団体のIR地区にしか参加できないことが比較的早い段階で決まってしまう。
◇十分なIR事業者(カジノ事業者)の申請を得られない地方公共団体はIR地区の選定段階で淘汰されてしまう。

上記の検討によれば、IR事業者選定先行方式の方がIR地区選定先行方式よりも優れている点が多いようにも見えます。

4 共通の課題

(1)IR事業者への背面調査の時期
IR地区選定先行方式・IR事業者選定先行方式のいずれの方式においても、カジノ管理委員会によるIR事業者の背面調査・免許審査が第3段階となるため、最後の段階でIR事業者の免許の取得が認められないというリスクがあります。
この点については、地方公共団体がIR事業者の選定の段階において背面調査を行っておく必要があると考えます。
マサチューセッツ州ではGaming Commissionによるカジノ事業者の背面調査が、カジノ事業者の選定よりも前になされます。

(2)IR事業者選定の透明性
地方公共団体によるIR事業者の選考にあたって、どの程度透明性を求めるのかという問題があります。とりわけ、IR事業者選定先行方式は、IR地区選定先行方式と比べてより、地方公共団体の選定における裁量的判断を認めてよいかということが問題になります。


渡邉 雅之 弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士

(略歴) (役職)
1995年:東京大学法学部卒業
1997年:司法試験合格
2000年:総理府退職
2001年:司法修習修了(54期)
弁護士登録(第二東京弁護士会)
2001年~2009年:アンダーソン・毛利・友常法律事務所
2007年:Columbia Law School (LL.M.)修了
2009年:三宅法律事務所入所
成蹊大学法科大学院 非常勤講師
(金融商品取引法担当、平成20年~)
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 委員
日本弁護士連合会 国際刑事立法委員会 委員
第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会 委員
第二東京弁護士会 司法制度調査委員会
民法改正部会 委員
第二東京弁護士会 綱紀委員会 委員

(主要関連論稿)
『IR導入に当たって検討すべきマネー・ローンダリング、反社会的勢力の関与の問題と提言』(NBL1036号・2014年10月15日号)
『日本におけるカジノ導入とギャンブル依存症問題』(週刊金融財政事情2014年10月6日号(3091号))
『カジノ導入に当たっての論点整理(上)・(下)』(共著)(NBL1014、1015号、2013年12月1日号・12月15日号)
「IR推進法の概要と検討すべき問題点」(週刊金融財政事情2014年1月6日号)
「カジノ法案が想定するビジネスモデルと各種規制」(ビジネス法務2014年3月号)

(関心を持った経緯と今後の研究)
もともと、銀行等の金融機関のコンプライアンスを中心に弁護士業務を行ってきました。米国留学時にラスベガスを訪問しましたが、日本において同様の統合的なリゾートができれば、経済発展に非常に資すると実感いたしました。
カジノは、金融規制、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の排除など、「小さな銀行」といった性格があり、これまでやってきた業務に非常に親近性があります。 日本においてIR(カジノを含む統合的リゾート)を導入するにあたって、どのような規制を設けていくべきかという観点から研究を続けてまいりたいと思います。

 

カジノIRジャパン

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. 【速報】え?女性が彼とのベッドの中で約100万円獲得!?

    ベラジョンカジノから【速報】です。   ベラジョンカジノで、 わずか約…

おすすめ記事

  1. ベラジョンカジノから【速報】です。   スマホで遊べることでも日本でも人気…
  2. エンパイアカジノで遊んでいて気になった点がいくつかあったので、サポートの方に直接きいてみました♪ …
  3. 40ドルベットでのプレイ中に獲得した無料ゲームの1スピン目に、スキャッター絵柄が5個揃い、合計ベット…

話題をチェック!

  1. 一般フロアで更にミニバカラであれば、日本のゲームセンター程度の額で参加できてしまうカジノの「バカラ」…
  2. 2015年1月で、マカオ全体の「いわゆるギャンブル」の収益が、8ヶ月連続で下落したと発表されました。…

アーカイブ

ページ上部へ戻る